土地の購入価格はなぜ低く抑えられたのか
南芦屋浜の涼風町5番にある教育施設用地は、芦屋市が県から取得し、民間事業者に貸し付けている土地です。今回は、その購入価格と賃料が低く抑えられた理由、そして市民への還元が実際に果たされてきたのかをお伝えします。
この土地の購入価格が大きく下がったことには、理由があります。2016年5月23日の意見交換会で、佐藤副市長は、当時36億6,000万円とされていた土地を、20億円で譲り受けたと説明しています。差額は16億6,000万円。もとの価格より約45.4%低い金額です。
・当時、市が説明した土地価格:36億6,000万円
・芦屋市への譲渡価格:20億円
・差額:16億6,000万円(約45.4%)
なぜ、これだけ安く取得できたのでしょうか。当時の副市長の説明では、教育施設用地として、認定こども園などの子育て機能や、小学校が担うはずだった防災拠点、地域交流など、市民に貢献する機能を実現することが前提にありました。マンション用地などとして売る場合に比べ、「市民に開けた公共施設」として、土地の使い方に制約があるため、価格が抑えられたということです。
市が16億6,000万円低い価格で取得できた背景には、市民のために役立てるという目的がありました。だからこそ、その目的が実際の使われ方にどれだけ生かされてきたのかが問われます。
※36億6,000万円は当時の市の説明に出てくる土地価格で、現在の相場ではありません。45.4%は二つの価格の差から計算した割合です。
オープン当時の姿と その約1年後の姿
2017年8月5日、オープニングの記念式典が行われました。当時、地元の自治会長だった私も来賓としてテープカットに参加しました。
【2017年8月5日のオープニング記念式典】
リニューアルという形で、新たに紹介されたのが、スポーツ施設に加えて、図書コーナーや交流スペースなど、市民が利用できる機能が設けられたことでした。
【かまどベンチのお披露目】
【オープン時の図書コーナーと畳のスペース】
このように、当時、市は行政が主体となり、市長や教育長、市議会議員などを来賓に招き、大々的なお披露目のセレモニーを開催していました。つまり、ミズノスポーツプラザ潮芦屋は、単に民間事業者が営利目的で運営する施設として開設されたわけではありません。
それまでの県有地を借り受けた民間事業とは異なり、市有地を活用する新たな事業者として、市民サービスの提供という公共的な役割を担うことが期待されていた施設なのです。
だからこそ、事業者には、単に施設を運営して収益を上げるだけでなく、市民が利用できる機会を確保し、地域に開かれた施設として、公共的な機能を充実させていくことが求められていたはずです。
市有地を民間事業者に貸し付ける以上、その土地が市民にどのような利益をもたらすのか。ここが重要な視点だったと考えています。
実際は、市民に開かれた場所になっていたのか
ところが、オープンしてから約1年後のことです。
【約1年後の図書コーナー】
何ということでしょう⋯。
たった1年でこのありさまです。私が現地を確認した際には、図書コーナーの照明が消え暗く、本もスカスカ、段ボールの荷物が置かれていました。
また、その奥にある赤ちゃんの駅(おむつ交換の場所)は、洗濯物が干してあり、母子から「ここって使える所だったよね?」と連絡がありました。とても使用してもいい状態ではありませんでした。これは2018年、コロナ禍よりも2年も前のことなので、その影響は受けていません。
このような状況で、市民が利用できる公共の場所を提供していると言えるのでしょうか。既存の建物をそのまま使う民設民営の施設に、10年という限られた契約期間の中での投資で、採算を確保しながら市民サービスまで担うことを民間に求めた行政の進め方そのものに、無理があったのではないかと思います。
【段ボールの荷物の中で本を読む子どもたち】
私は、こうした状況を目の当たりにし、大変遺憾に感じました。
掲載している写真は、私が実際に現地を訪れた日に確認した状況を記録したものです。だからこそ、その後、どのような改善が図られ、実際にどれほどの市民に利用されてきたのか、市として検証する必要があると考えています。
当時、私は、まだ議員ではなかったので、現職の市議に相談に行きました。図書コーナーや赤ちゃんの駅、市民無料開放枠などについて、単に「設けています」と説明するだけで、その後の運営は、市民に広く知られた開かれた施設としての役割を果たしているとは思えなかったからです。
利用できる時間や方法が市民に十分周知されていたのか。誰もが安心して気軽に立ち寄れる環境だったのか。そして、継続的に利用されるよう、適切な管理や運営が行われていたのか。
市民への開放という条件を形式的に満たすために、取って付けたような設備やサービスを設けたところで、それが実際に利用されなければ、公共的な役割を果たしているとは言えません。それでは、市民に示した説明と実態が伴わないということになります。
さらに、この土地が、もともと県から借り受けて民間事業が行われていた土地であり、その後、芦屋市が県から購入して市有地となった経緯についても、十分に知らない市民が少なくないのではないかと感じています。つまり、市民が堂々とこの施設を利用することができない状況でした。
市が公費を投じて土地を取得した以上、何のために取得し、市民にどのような利益をもたらすことを目指したのか。その目的が実際に達成されてきたのかを、行政はきちんと検証し、市民に伝える責任があります。
私は、これまでの運営状況を見る限り、市民がこの土地に期待した公共的な役割が、十分に果たされてきたとは考えていません。
次の事業者の選定に当たっては、単に市民向けの設備やサービスを設けることを条件とするのではなく、実際の利用状況や運営実態を継続的に把握し、これまで期待させてきた「公設」を念頭に、複合施設としてその成果を検証できる仕組みまで整える必要があると考えています。
事業者への賃料はどれだけ安く 市民に還元されたのか
土地を貸し付ける際の賃料にも、市民無料開放枠など、市民への還元を前提とした減額があります。では、どれほど安く貸しているのでしょうか。一般質問に向けて私が整理した資料では、比較の基準とした賃料と実際の貸付賃料は次のようになっています。
2017年4月当初(貸付面積24,000平方メートル)
・資料上の通常賃料:月額484万7,545円
・実際の貸付賃料:月額330万円
・減額:月額154万7,545円
・年間の減額:1,857万540円
・通常の賃料に対する減額率:約31.9%
2021年4月以降(貸付面積17,100平方メートル)
・資料上の通常賃料:月額345万3,876円
・実際の貸付賃料:月額190万円
・減額:月額155万3,876円
・年間の減額:1,864万6,512円
・通常の賃料に対する減額率:約45.0%
つまり、貸付面積が小さくなった後も、市民無料開放などを前提として、年間約1,865万円分、通常の賃料より安く貸し付けているということです。
この差額に見合うだけの市民利用の機会が、実際に確保されてきたのでしょうか。私は一般質問で、この約10年間の公益的な役割を市がどう評価しているのか、そして、その検証結果を次の事業者の募集条件にどう反映するのかを尋ねました。
公費で取得した土地を、市民のための機能を求めて安く貸し付けている以上、利用実績や管理状況を市が継続的に確認し、市民に説明する必要があります。次の事業者の選定でも、求める市民サービスを具体的に示し、実際の利用につながっているかまで検証できる仕組みが必要だと考えています。
※通常賃料は、一般質問に向けて整理した資料上の比較額です。減額率は、その月額をもとに計算しています。
















