これまで①〜④の記事では、南芦屋浜の涼風町5番教育施設用地について、市が土地を取得した経緯や、民間事業者への貸付条件、市民との約束、そして次の事業者募集に向けた市の対応についてお伝えしてきました。
今回は、住民説明会の報告内容です。
1回目の説明会の参加者は5名
1回目の説明会は、三連休初日の10月10日(土)、午前10時から開催されました。参加者は男性4名、女性1名の計5名。いずれも地域の自治会役員の方々でした。市は事前に、近隣の戸建て住宅地区にある4つの自治会の会長に直接会い、説明を行っていたとのことです。そのこともあり、自治会関係者が参加されていたようです。
一方、案内チラシの配布などで説明会を知り、自ら参加された一般住民の方は、私が確認した限りでは、この日はいらっしゃいませんでした。説明会は1時間の予定でしたが、質問をされたのは2名で、約30分で終了しました。
結果として、市から事前に説明を受けた自治会関係者が中心となり、予定時間の半分ほどで終了した説明会でした。そもそも、開催を知らせるチラシが配布されたのは、わずか4日前です。三連休初日の午前中という日程も含め、市民が予定を調整し、関心を持って参加できるような周知だったのでしょうか。
内装の一部に改修はあったものの、外観も、そこで行われている習い事なども、大きく変わっていません。市民からすれば、以前からある「ミズノスポーツの施設」という認識のままでしょう。
土地の所有者が県から市に変わり、市民のための機能を備えることが求められる施設になったということが、どのくらいの市民に伝わっていたのでしょう。
実際、市が所有する土地であることすら知られていない状況なのです。私は、この10年間、市が市民に対して、この場所の位置づけを積極的に知らせてきたとは思えません。その上で、市職員の発言に違和感を覚えた内容がありました。現在の事業者に対する苦情を直接市は聞いたことがないという趣旨の説明をしていた点です。
そもそも、市民がここを民間のスポーツ施設だと思っていれば、なぜ市に苦情を伝えようと思うのでしょうか。まして、施設を利用していない人であれば、何について苦情を伝えるというのでしょう。
この施設には、市民のための図書コーナーや赤ちゃんの駅、市民無料開放枠などが設けられています。ところが、以前、私が発見した際には、施設のホームページから、これらの市民向け機能についての説明が見当たらなくなっていたこともありました。そのことについては、私から市に指摘したことで、掲載されるようになりました。
市民に開放されている場所であることを知らなければ、利用しようと思うことすらありません。
「苦情がない」ということは、「市民が満足している」ということではありません。
市民が存在を知らない機能について、利用されていないことや不便さを問題として伝えることは難しいはずです。本当に必要なのは、苦情の有無だけではなく、市民にどれだけ認知され、どれだけ利用されてきたのかという検証ではないでしょうか。
前の記事でも取り上げましたが、市は公共的な機能を確保することを条件に、賃料を低く設定して土地を貸し付けてきました。その分、市民にどれだけ還元されてきたのか。施設を設けたという説明だけではなく、実際に利用できる状態にあったのか、利用実績はどうだったのかという点まで確認する必要があると考えています。
2回目の説明会の参加者は4名
2回目の説明会は、10月14日(水)の午後7時から開催されました。参加者は男性2名、女性2名の計4名。それぞれお一人で参加されていました。1回目との違いは、この日は次々と質問や意見が出されました。午後8時までの予定でしたが、終了したのは午後8時20分ごろ。参加者はわずか4名。それでも、予定時間を20分も超えるほど、建設的な意見が出されたのです。
私が印象的だったのは、単なる施設への要望にとどまらず、今後の土地利用や事業者募集の進め方そのものについて、具体的な意見が出されていたことです。
・なぜ、事業者募集の要綱をまとめる前に、市民へのアンケートを行わなかったのか。
・なぜ、懇話会のような場を設け、市民の需要や地域に必要な機能を調べようとしなかったのか。
・市民がどのような場所を求めているのか、その声を事業者にも届け、より良い提案につなげる仕組みが必要ではないか。
こうした意見が次々と出されました。また、現在のような募集の進め方では、新たな事業者や開発事業者が参入しにくいのではないかという指摘もありました。募集条件の設定次第で、民間事業者から出される提案の幅は変わります。市民の意見を十分に聞かないまま条件をまとめてしまえば、せっかくの民間活力や新しい発想を生かす機会まで狭めてしまうのではないでしょうか。
私は、こうした意見を聞きながら、まさに、これこそ市がもっと早くから市民と話し合うべきだった内容ではないかと感じました。
返還された土地を、また次の10年間もこのままにするのか
説明会では、契約途中で市に返還された土地の活用についても意見が出されました。当初、事業者に貸し付けられていた約24,000㎡のうち、2021年4月以降、約6,900㎡が市に返還されています。この土地については、これまでの記事でも取り上げてきました。返還されたにもかかわらず、十分に有効活用されないまま、年月が過ぎています。このまま次の事業者募集に進めば、再び長期間の契約に縛られ、土地の活用方法を見直すことが難しくなる可能性もあります。
説明会では、募集を延期してでも、将来の土地利用について、もっと知恵を絞って検討する余地があるのではないかという意見も出されました。私は、この意見は非常に重要だと感じました。
また、近隣の自治会では、これまでフットサルコートを地域のお祭りの会場として利用していたところもありました。(※今年は利用せず別の場所で開催されます。)こうした地域活動の実態も踏まえながら、土地全体をどう活用していくのかを考える必要があると思います。
事業者を募集して契約を結ぶことが目的ではありません。市民にとって、この土地をどのように生かすのかが、本来の目的であるはずです。
10年前は南芦屋浜全体で考えていたのに、今回は一部の近隣住民だけ?
今回の説明会を終えて、もう一つ強く感じたことがあります。10年前、この土地の将来を検討していた際には、南芦屋浜地区全体を対象とする「10ブロック会」を窓口として、広く地域住民の意見を聞いていました。当時は、この土地を南芦屋浜全体のまちづくりに関わる問題として捉えていたのです。
ところが、今回はどうでしょうか。市が案内チラシを配布したのは、土地に隣接する一部の地域の約700世帯だけでした。10年前には地域全体で考えていた土地の将来を、今回は限られた地域への周知だけで済ませようとしているのです。
そもそも、ここは一部の近隣住民だけの土地ではありません。芦屋市民全体の財産です。
なぜ、南芦屋浜地区全体に知らせようとしなかったのでしょうか。さらに言えば、なぜ芦屋市全体の将来を考える機会として、もっと広く市民の意見を聞こうとしなかったのでしょうか。
私は、今回の対応を見ていると、積極的に市民の声を集めようとする姿勢が感じられませんでした。むしろ、できるだけ知らせる範囲を限定し、必要最小限の説明だけで静かに手続きを進めようとしているようにさえ映ります。
もちろん、市がどのような意図で周知範囲や日程を決めたのかは分かりません。しかし、結果として2日間の参加者はわずか9名でした。これで市民への説明を尽くしたと考えるのであれば、あまりにも不十分ではないでしょうか。
高齢化が進む今こそ、もっと地域に開かれた居場所を
私は、この問題を単なるスポーツ施設の継続や土地の貸付契約だけの話だとは考えていません。これからの芦屋市のまちづくりに関わる問題だと思っています。
芦屋市でも高齢化が進むなか、地域活動の担い手や、人と人とのつながりをどのように維持していくのか。
子どもたちが放課後に過ごせる場所、高齢者が気軽に立ち寄れる場所、世代を超えて交流できる場所を、どう確保していくのか。
これまで以上に、考えていかなければならない課題です。それなのに、今回の市の対応を見ていると、行政自らが市民の参加機会を狭め、地域活動を閉鎖的なものにしているようにも感じてしまいます。
なぜ、もっと市民力を信頼し、その知恵や経験をまちづくりに生かそうとしないのでしょうか。
民間事業者の発想やノウハウを活用することも、もちろん大切です。しかし、単に民間事業者へ土地を貸し付けることと、市民のために民間活力を生かすことは、同じではありません。市民が必要としているものを把握し、その声を事業者にも届け、行政と市民、民間事業者が一緒になって、より良い活用方法を考えていく。
そうした取り組みこそ、必要なのではないでしょうか。
防災や地域交流の拠点としても、考える余地があるのでは
例えば、防災という視点もあります。南芦屋浜地区では、潮見小学校が指定避難所となっています。
私は今年1月、潮見小学校区の防災訓練に参加しました。避難所には、防災用品や避難生活に必要な資機材などが備えられており、訓練を通じて、普段からその場所や使い方を知っておくことの大切さを改めて感じました。
しかし、災害への備えは、指定避難所だけで完結するものではありません。例えば、南芦屋浜地区の中に、地域で使える防災用品を保管したり、防災訓練や住民同士の交流に活用したりできる場所があれば、地域の防災力を高めることにもつながるのではないでしょうか。もちろん、浸水リスクや施設の安全性、既存の指定避難所との役割分担などは、十分に検討する必要があります。
私は、この土地をそのまま新たな避難所にすべきだと言っているわけではありません。ただ、普段は子どもから高齢者までが集える地域の居場所として活用し、災害時には地域の防災活動を支える機能も備える。
そんな複合的な活用方法も、検討する余地があるのではないかと思うのです。これは、あくまで一つの例にすぎません。
もっと多くの市民から意見を聞けば、私一人では思いつかないような、新しい活用方法が出てくるかもしれません。実際、10年前の意見交換会でも、避難所として利用できる体育館、子どもの居場所、図書機能、地域交流の場など、さまざまな要望が出されていました。
その声を踏まえて、この10年間に何が検討され、何が実現してきたのか。改めて振り返る必要があると思います。
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市長が変われば、市民との約束もなくなってしまうのか
10年前、当時の市長や副市長は、将来の土地利用について、住民とともに考えていくという方向を示していました。そして、その後の市政においても、将来の土地活用を市民と考えていくという方針が引き継がれていることを、私は議会で確認してきました。ところが、今回の住民説明会に至るまでの経緯を見ると、その方針が十分に実行されてきたとは思えません。
市長が変われば、政策の優先順位や考え方が変わることはあるでしょう。しかし、過去に市民へ説明したことや、将来に向けて検討するとしていた課題まで、何の説明もなくいつの間にか置き去りにされてよいのでしょうか。
行政には継続性があります。市長が変わったからといって、市民との約束までなかったことにはできないはずです。
特に今回は、市民の財産である土地の将来に関わる問題です。当時の経緯を知らない市民が増えているからこそ、市がその経緯を丁寧に説明し、今後の活用について改めて意見を聞く必要があったのではないでしょうか。
私は、今回の市の対応を見る限り、10年前に示されていた市民との合意形成に向けた姿勢が、現在の市政に十分引き継がれているとは感じられませんでした。
2日間の説明会を終えて、改めて思うこと
私は今回、この住民説明会において、あえて住民へ個別に積極的な参加の呼びかけは行いませんでした。自ら動員をかけずに、市が行った周知だけで、どれだけの関心が寄せられ、どれだけの住民が集まり、どのような反応があり、どんな意見が出るのか。その実態を確かめたかったからです。
10月10日(土)と14日(水)に開催された住民説明会に、私も両日参加しました。実際に参加して分かったのは、この場所が市有地であることや、市民が利用できる機能が設けられていることが、十分に知られていない現実です。一方で、少ないながらも参加者からは、今後の土地活用について非常に前向きで、建設的な意見も出されました。私は、そこにこそ、今回の説明会の大切な意味があったと思っています。
私は、この2日間を通じて、なぜ市は、もっと早くから市民の声を聞き、将来の土地活用を一緒に考えてこなかったのかという思いを、さらに強くしました。
事業者募集の条件をまとめる前に、アンケートや意見交換の場を、もっと早くから取り掛かることはできたはずです。10年という時間があれば、地域に必要な機能を調べ、市民と将来像を共有し、民間事業者から幅広い提案を募る準備もできるからです。
私は、現在のスポーツ施設そのものや、そこを利用されている方々を否定しているわけではありません。現在の利用者だけでなく、施設を利用していない方々、子どもたち、子育て世代、高齢者、そしてこれから芦屋市で暮らす人たちにとって、どのような場所が必要なのか。そこまで考えることが、市の役割ではないでしょうか。
市民の意見を聞くことは、説明会を開催したという実績をつくることではありません。
出された意見をどのように受け止め、計画に反映させていくのか。それが、何より大切だと思います。私は、もっと市民の力を信頼してほしいと思っています。
市民の知恵や経験、地域に対する思いを、行政が積極的に引き出すこと。そして、その声に民間事業者の発想や技術を組み合わせることで、より良いまちづくりにつなげていくこと。
そのための時間は、10年間もあったのです。
今からでも時間をかけて市民の声を聞くことは、行政にとって余計な手間ではありません。市民の知恵や経験こそが、より良いまちづくりにつながる大切な力なのです。
今回の住民説明会を、単に開催したというだけで終わらせてほしくありません。今回出された意見を、市がどのように受け止め、今後の事業者募集に反映させていくのか。引き続き、議会でも確認していきたいと思います。
ちなみに、JR芦屋駅南地区再開発事業は、散々延期を繰り返して、事業計画を変更したり決まらなかったりしていた事業です。そういう事業もあるんですよね。
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