南芦屋浜の涼風町5番の教育施設用地では、契約期間の途中で事業者から市へ土地の一部が返還されました。今回は、返還後の活用と賃料、9月18日の決算審査で確認したこと、そして次の事業者募集の条件を考えます。
契約期間の途中で、市に返還された土地の行くえ
契約期間の途中で、事業者に貸し付けていた土地の一部が市に返還されています。貸付面積は、2017年4月当初の24,000平方メートルから、2021年4月以降は17,100平方メートルに減りました。返還されたのは、約6,900平方メートルです。
市の現況図では、返還された部分が斜線で示されています。まずは航空写真で、当初の貸付範囲と返還された場所を見比べてください。
1枚目はもともとの活用範囲、2枚目は駐車場とフットサルコート1面があった側の返還部分を示しています。赤線は位置を説明するための表示です。
返還されたのは、もともと駐車場として使われていた部分や、フットサルコート1面があった部分などです。しかし、土地が市に戻ったからといって、新たな市民利用の場が整えられたわけではありません。
では、この土地は、市に戻されてからどうなったのでしょうか。
事業者は返還した部分の賃料を支払う必要がなくなり、市の賃料収入は減りました。その一方で、返還された土地は、市民が日常的に使える新たな場所として整備されていません。外から見た様子が変わらなければ、市民がこの変化に気づくことも難しいのではないでしょうか。
ピンク色で囲んだ部分には、駐車場とコート1面が描かれています。返還部分の位置を説明するための図面です。
そして、市がこのたび、事業者募集をする前の土地として、2026年9月2日の総務常任委員会の所管事務調査で示した土地の現況図がこちらです。
図では、市への返還地を含む斜線部分が、認定こども園に隣接する右側にも示されています。この時点の説明について、私は、これらの部分が募集対象に含まれない可能性もあると受け止めました。土地全体をどう活用するのかが明確でないままでは、新たな事業者が応募しにくいのではないかと懸念しました。
その後、9月18日の決算審査で私が改めて質問した際には、市は、返還地を含む約24,000平方メートル全体を募集対象とする方針だと説明しました。私は、この段階になってようやく募集範囲が明確に示されたと受け止めています。
【現地で確認した返還された土地の様子】
手前には車止めが設けられ、そのままの状態で残っています。
【契約締結当時から整備されず活用が見送られていた土地】
こちらの場所は、舗装されていない広い地面と、周囲に草が生えている様子が確認できます。
市に土地を返してもらったのであれば、その土地を市民のためにどう使うのか。そこまで考えるのが、土地の所有者である市の役割ではないでしょうか。
市は2024年6月の答弁で、返還地について、一時利用の申出があった場合には貸し付けていると説明しています。しかし、私が問題としているのは、市民が日常的に利用できる場として、継続的な活用が進んでいないことです。返還から5年以上がたっても、教育施設用地としての可能性が十分に生かされていません。一時利用の実績や収入も含め、市はその状況を説明すべきです。
公費で取得した大切な市有地です。返還を受けた後、どのような活用を検討し、なぜ実現していないのか。管理の状況も含めて、市民に説明する必要がありました。
土地全体を見て 市民のための将来像を考える
9月18日の答弁で、返還地を含む土地全体を募集対象とする方針は示されました。しかし、全体を募集対象にすることと、そのすべてが実際に活用されることは別の問題です。
この土地は、小学校建設の中止後も、地域の交流や防災、子育てなどを支える場所として期待され、市が取得した土地です。スポーツ施設として使う部分と、使われないまま残る部分に分かれた状態を、引き継いでいくのでよいのでしょうか。
返還地に地域が必要とする機能を設けられないのか。現在のスポーツ施設との組み合わせも含め、土地全体で何ができるのか。市民のニーズを十分に把握しないまま事業者へのサウンディング調査を進める前に、まず市自身が考えるべきだったのではないでしょうか。
私は、返還地も含めた土地全体について、市が何を実現しようとしているのか、その将来像を示す必要があると考えています。子どもたちの居場所、図書や読書を楽しめる場所、地域の人たちが集い、交流できる場所。これまで住民から寄せられてきた声を、庁内全体で共有し、具体的な活用につなげる必要があります。
事業者に何を求め、市がどの部分を担うのか。その役割分担も、市民に必要な機能を実現するという視点から十分に考え直すよう、私は求めてきました。
一般質問に続き、決算審査でも確認したこと
2026年9月18日の決算特別委員会・建設公営企業分科会でも、私は涼風町5番の土地を取り上げました。「公共用地取得費特別会計」の審査で確認したのは、土地の一部が市に返還された後の賃料と、その土地の活用です。
都市政策課長の答弁では、2021年4月1日に契約を変更し、一部返還に伴って賃料を改定したとのことでした。その変更契約に伴う減額は、2025年度(令和7年度)までの累計で8,400万円に上ると説明されました。
市がこの金額を把握しているのであれば、返還された土地をどうするのかという話にならないのでしょうか。私は、市の収入につなげることも、市民に使ってもらうことも考えられる土地について、その活用を市として検討しているのかを問いかけました。
次の事業者募集については、副市長から、返還地を含むすべての面積を公募の対象とするとの説明がありました。一方、現在の状態については「決していいとは思っていません」と答え、土地全体の活用にはハードルが高いことも認めたうえで、まずは公募で民間事業者の考えを聞きたいと述べました。
現在の事業者から一部の土地が返還された経緯がある中で、土地全体を公募に出せば、返還された部分まで活用できるのでしょうか。私は、その土地が再び使われないまま残るのではないかという懸念も伝えました。
土地の所有者は芦屋市です。スポーツ推進課の事業者募集だけに委ねるのではなく、市として、この土地をどのように市民のために生かすのかを考える必要があります。返還後の状況を振り返り、市が担う役割も含めて検討することを求めました。
8,400万円と、公共的な役割を求めた賃料の減額は別の話
一部返還により、実際の賃料は月額330万円から190万円へと変わっています。差額は月額140万円。2021年4月から2026年3月までの60か月分で8,400万円となり、市が答えた2025年度までの累計額と一致します。これは返還に伴う契約変更前後の賃料の差で、第2回で紹介した市民無料開放などを前提とする減額とは比較するものが違います。二つを足して「損失額」とすることはできません。
この質疑では、庁内の各部署から活用の提案が出てこないのかも尋ねました。例えば、仮設の施設を設けて子どもたちの放課後の居場所や中学校の部活動の場にするなど、市自身が具体的な可能性を考えてほしいと伝えました。
市側は、公募の条件を増やすと事業者が応募しにくくなることを懸念していました。一方で、地域が求める公共的な機能について、公募要件に加える方法以外にも、評価上の加点などで考える余地があるという趣旨の答弁もありました。
さらに私は、この土地が市の保有地であること、これまで市民と土地利用について話し合うと説明されてきたことを、担当課を越えて共有してほしいと求めました。
これに対し、国際文化推進担当部長は、10年前に市民の声を聞き、土地利用について議論していくと約束していたことを認識していると答えました。「先日の本会議でもお詫びしましたとおり」と述べ、対話を実現できず、今になったことについて反省する点があると説明しました。その一方で、その後の状況を踏まえると、当初の約束どおりの実現や、ゼロベースでの再検討は難しいとの考えも示しました。
そして、今回確認できた具体的な動きがあります。私が本会議で指摘した後、各所管課へ直接照会し、この土地の利用に関する意見を集めているとの答弁がありました。
土地を市民のためにどう生かすか。各部署が関わって考えることを、具体的な提案につなげていただきたいと思います。私は最後に、活気のある前向きな提案を期待していると伝え、質疑を終えました。
参考:2026年9月18日 決算特別委員会・建設公営企業分科会「公共用地取得費特別会計」公式録画
サウンディング調査から見えた 事業期間と市の関わり方への懸念
民間事業者に活用の可能性や事業条件を聞くサウンディング型市場調査でも、市の進め方を考えるうえで重要な提案が出ています。
9月2日の委員会資料には、事業者Bの意見として、フィットネスクラブはおおむね30年契約を基本とし、最初の10年で投資を回収し、その後に利益を得る考え方が紹介されています。この土地で自ら建物を建てる場合、10年間では採算が合わないという趣旨です。
また、市が建物を整備し、事業者が家賃を払って入る形であれば、参入しやすいという提案も出ています。
事業期間や市の関わり方を変えれば、実現できる施設やサービスも変わる可能性があります。それならば、これまでの条件を前提に募集を進める前に、こうした提案をどこまで検討したのかを示す必要があるのではないでしょうか。
私は一般質問に向けて、20年、30年といった長い期間も含め、どのような条件なら必要な施設整備ができるのかを比較検討すべきだと考えました。期間を長くすればよい、というだけの話ではありません。市民に必要な機能を実現し、持続的に運営できる条件を考える必要があります。
市が公共的な部分の整備を担う方法はないのか。収益を生む施設と、子どもの居場所や地域の交流機能を組み合わせられないのか。複数の事業者や地域の団体が関わる形は考えられないのか。
それぞれの方法で何が実現でき、市にどの程度の負担やリスクが生じるのか。その比較を市民にも示したうえで、土地全体の活用を考えるべきではないでしょうか。
私は、これまで示されている説明だけでは、こうした提案や住民の声を踏まえ、土地全体の可能性を十分に比較検討してきたとは受け止められません。
地域に必要な機能は何か。そのために市は何を担い、民間の力をどう生かすのか。事業者を募集する前に、市自身の考え方を示し、住民と話し合うことを求めています。
参考:2026年9月2日 総務常任委員会説明資料 4~5ページ
今回の説明会では、次の事業者の募集内容とともに、市に返還された土地を含めた今後の考え方についても、説明していただきたいと思います。
















