修正動議の目的
この議案内容についてはこちらでご説明しています。
👉たかおか知子ホームページ『JR芦屋駅南地区再開発事業【#14】』
提出者は修正案の説明の中で、「修正の目的は、JR芦屋駅南地区再開発事業の見直しを図り、新たな事業手法の検討を求めるため」と言われていました。つまり、平成30年に議会で議決された既に事業認可もある「第二種市街地再開発事業」を含む都市計画決定を一度白紙にとうことを発言されていました。
この説明を受けた後、提出者に「この修正案はいつ思いついたのか?」と私が尋ねると「問題点はずっと認識していた。」と言われ、明確な月日を尋ねると「かなり前から」という発言がありました。もし以前から事業手法を変更させたいと感じていたのであれば、行政が縮減案を着手する前に今回のような要求をしておくことができたはずです。
私がこのようなことを意見するとその後別の提出者からは「11月26日に行政が見直し案を示した内容を見るまでは、以前はこういった案は考えとしてもち合わせていなかった」という発言をされていました。
今度は、最近考えついたという答弁だったわけですが、そうであれば修正案を提出するまでに2週間足らずしかなかったわけです。そんな短期間で考え出された修正案と、長期に渡り多くの方を巻き込んで構築してきた計画を更に半年間をかけて再算定した行政の原案とでは、比較対象にならないと言わずにはいられませんでした。
再算定を行い事業手法を再度検討した結果、行政としては現計画をベースに事業費縮減を行った場合の『E案』がもっとも実現可能な計画となる事業手法であると示していました。ここで提出者は、下記の説明資料A~F の案を並べた6パターンについて「何を根拠に◯✕をつけているのか?再開発ビルありきの事業に誘導させるために◯✕をつけているのではないか」という指摘をされていました。
しかし、これから新たな手法を選ぶために6パターンを比較にしていた資料ではありませんでした。実現性の有無に関わらず、事業費や市民提案等を含む、これまでの案を並べることで、相対的にわかりやすく説明するだけのために◯✕で示されていたのです。事業手法の検討に係る議会への説明は平成25年の時点ですでに終了しています。
別の質疑では、当局から「A案では、横断距離は長くなるにもかかわらず乱横断の危険性は改善されないままであるため、交通に係る安全性は現状より悪化する可能性が高いのは?」ということが提出者に告げられると、提出者は「歩道橋を設置すればよいのでは」という返答をされていました。
その答弁を聞いていて私は思いました。「問題が起これば後から行政が考えればよいこと」と言うかのように、代替案を出さずにまる投げするだけでは、事業を進める段階で補足の費用が増え返って事業費が膨らんでしまう状況をつくりだすことになります。
冒頭の説明で提出者は「説明資料のA案を基軸にする整備計画を求めている」とも発言していましたが、別の提出者は「街路事業であればA案にこだわっているわけではない、B案も選択肢にある」と、ここでも2名の発言内容が食い違っていました。
このように、提出者2名の答えが真逆であったりと受け答えが統一しておらず、修正案に対する考えついても信憑性がなくなっていったのです。
次に私が「当局の案では、駅南側にバスが260便移るということだったが、修正案ではどうなるのか?」と尋ねると、提出者は「今後の見直しは阪急バスとの交渉次第」と発言されました。このことは、現計画の手法以外にバスの便についてのエビデンスもなく、安定した整備計画を示せていないということになります。今から他の事業手法に変更するとなると、交渉はゼロからのスタートとなっていくわけです。整備計画が決まらなければ、何年もバスの便は南口に移行されることもありません。
行政はこれまで、警察・公安委員会・交通事業者との協議を重ね確認をとられた内容を元に計画決定してきました。これと同様に、提出者も事前の確認を経て実現可能だという根拠を示せてから、修正案を提出するべきだったと感じました。
再開発事業は、JR芦屋駅前を利用する人だけの交通整備ではありません。昭和21年から続いている地区における駅前広場に係る都市計画決定は、南芦屋浜の埋め立て計画と連動しており、交通導線として広い範囲の市民の方に影響があるのです。
南芦屋浜地区の交通利便性は、駅前広場が未完成のために、駅北側の交通混雑やバス便の不足など、様々な歪みや課題が発生しているため、現在に至るまでバスの便が少ないなど、交通課題が解決されてきませんでした。
再開発事業が行われ、芦屋浜・南芦屋浜などJR駅より南側に住まわれている人のバス通勤や通学の時間が短縮されると「何もしなくても自分の家に駅が近づいてきてくれると」となるはずだったのですが、再開発されないとなると、今後、バスの増便は保証されるのかもわからなくなってきました。
提出者は「市全体の市民の利益のためこの案を提案している」と言われていましたが、都市計画変更決定には約2年以上を要するため、地権者との協議をゼロからスタートさせると、再開発事業の施行期間を優に超える先の見えないスケジュールになると思います。
また、計画の変更に伴う、次年度の国庫補助金に及ぼす損害額や事業費のコストを超える負担額も発生する恐れがありますが、「入が減り出が増える」状態になりことが市民の利益のためになる選択であるとは思えず、私には理解できませんでした。むしろ、スケージュルやこれまでの計画の過程を見ても、今の段階で事業手法の変更は市民に大きな損失を与えると思っているぐらいです。
提出者は、「街路事業なら、地権者が少なく合意形成が容易」という発言をしていましたが、街路事業であっても地権者の賛否に関係することなく地権者の立ち退きが前提となります。再開発事業を行っていく上で、粘り強く協議を重ね地権者との信頼関係を作り上げてきた職員に対し、提出者の考え方は職員の労力を軽んじていると思えてなりません。
マスコミ報道では、地権者の賛成を得られていないということが印象づけられておりましたが、進捗状況を聞いていると、実際に反対されている方はごくわずかな人であり、交渉が進むにつれ、すでに承諾してくださっている地権者のほうが多いことが既にわかっています。
街路事業にするにしても、土地の買上げが必要であり、地権者との協議が始まる頃に言うべき話ではありません。人生設計が変わる方々が転居に伴う心的ストレスを考えると、慰謝料を賠償される事態になる可能性もでてくるような状態なのです。
再開発事業を、都市計画決定、事業決定してきた議会が、計画の変更に伴う弊害や損失が発生する今となって、実現が困難なことを突如に要求してきたことは極めて市民や行政の信頼を失うものでしかありません。
また、事業手法を変えることは、原則これまで受け入れた国費の交付されるべき根拠を失い返還となり、次年度の国庫補助金についても要望できず、街路事業にしても補助金がもらえるという確証はないのです。
今回、縮減案は、事業手法を変更するのが目的ではなく、原案に反対した議員からもはそのような表明はありませんでした。都市再開発事業に係る特別会計予算が否決になったのは、総事業費が高いという指摘があったからであり、事業手法を変更する見直し案を求める意見は特になかったのです。
コストの削減を求めてきた議員に答えるため、行政は立ち止まり経費を見直していた期間にすぎません。あらゆる状況を踏まえ、これ以上の減額で事業を行うことは不可能であり、今後の、国・県・地権者・JRと多くの関係者との行方からも、この定例会で否決している場合ではないと判断しています。
提出者2名は、根拠に基づく整備計画が示せておらず、街路事業は実現性に乏しいことがわかるため、芦屋市の長年に渡る事業計画をひっくり返してまで、この修正案が良い結果を産むという判断を下すことなどできるはずがありません。
当局からも、あらゆる状況を踏まえ「事業手法を変えることは不可能であり実現性はない」とできないということをはっきりと示されていました。12月議会でこの予算の執行を承認しないかぎり、再開発事業の凍結を意味することは明確です。
「再開発事業を白紙撤回にする」ということでここまで計画を狂わし、行政が提案するたびに否決が続くようでは、本意が何なのかとても理解しがたい印象を受けました。
それに比べ、行政が提示した縮減案は丁寧に分析されていたと捉えています。よって議員提出議案の修正案には反対しました。