■ 正副議長と事務局長と四人だけの話し合い
私は突然、議長室へ呼び出されることになりました。
呼び出されるということは、何か問題提起をされるということだと感じました。事務局長からの伝え方に齟齬があったのか、それとも正副議長に別の意図があったのか。議長室に呼び出されるというのは、よほど何かを大げさに受け取ってのことだという警戒心を抱いていました。
議長室には、議長、副議長、そして議会事務局長が同席しており、私一人に対して3人から聞き取りをするという形になりました。
聞かれたのは、行政視察を欠席したことについてでした。欠席の理由については、待機期間等、正しい経緯ですでに事務局へ報告しており、その後の対応についても特別な問題があるとは認識していませんでした。
そのため、正直なところ「なぜここまでの対応をしてくるのだろうか」という戸惑いがありました。濃厚接触者となったことを報告しただけの出来事が、議長室での面談という形で扱われるとは想像していなかったからです。
通常、議長であれば、もう少しフラットな形で話を聞く場になってもおかしくないと思います。しかし、この場は面談というよりも、すでに問題として扱う前提で説明を求められるような雰囲気でした。
当時の私は、この面談がきっかで、後に大きな叱責へとつながっていく出来事になるとは考えてもいませんでした。話して説明すれば済む簡単な話だと思っていたからです。
当時はまだ、新型コロナウイルスへの対応が社会全体で非常に慎重に扱われていた時期でした。感染状況によっては行動の制限が求められたり、濃厚接触者となった場合の対応についても、待機期間のマニュアルに沿って行動しなければなりません。だから、適切に対応していたことを伝えればよいと考えていました
■ 行政視察をめぐる指摘
複数の話が重なると、人は状況を正確に把握できず、さまざまな憶測が生まれやすくなります。特に、もともと遺恨を持っている人がいる場合には、そうした憶測がさらに広がることもあります。
話をしていくうちに、今回の件も、そうした情報の混在から疑念を持たれたものだったのではないかということが分かってきました。
結局、話の内容はこういうことでした。
私は、2日間の日程で予定されていた行政視察について、最初の1日が待機期間となっていたため、欠席という判断をしました。私としては、感染拡大を防ぐという観点から考えた、ごく自然な対応だったと思っています。
しかし、この面談の場では、その判断について疑問が示されたのです。具体的には、私が待機期間中、行政視察の前日の夜に検査キットで陰性を確認し外出していたという話が、どこからか伝わっていたというのです。
そこから、ある指摘が出されました。「陰性であれば、行政視察に参加できたのではないか」という趣旨のものです。
つまり、濃厚接触者という状況の中で陰性が確認されていたのであれば、行政視察を欠席した判断そのものに問題があるのではないか、というような話の流れになっていました。
しかし、私が欠席と連絡をしたのは、検査キットを行う前の段階での判断です。前日の夜になって急に参加できる状況になったとしても、現実的には対応が難しいものでした。
ここにきても、私が濃厚接触者であることを偽ったのではないか、あるいは陰性であることを隠して行政視察を欠席したのではないかという疑いが示されていました。
そのやり取りを聞きながら、私は次第に、この話し合いの場に強い疲労感を覚えていました。こんなにも説明しているのに、なかなか理解してもらえないものかと感じていたからです。
■ どちらを選んでも責められる状況
そして今度は、私が陰性と判断して外出したことについても問題が提起されました。
私は当時、国のガイドラインの日程が変更されていたことを踏まえて判断していましたが、事務局長の話では、本来は外出してはいけなかったのではないかという指摘があったのです。つまり、待機期間の日数の数え方を私が間違えていたのではないか、という話でした。
そうなると今度は「濃厚接触者なのに外に出たのではないか」という形で問題にされる可能性が出てきました。
もちろん当時は、新型コロナウイルスへの対応について社会全体が非常に慎重になっていた時期でもあり、濃厚接触者となった場合には周囲への影響を考えて行動することが求められていました。
しかし仮に、待機期間のガイドライン変更の日程を1日誤って認識していたとしても、それをここまで大きく取り上げる必要があるのだろうかという疑問が残りました。
つまり、欠席すれば「陰性なら参加できたのではないか」と言われ、一方では「濃厚接触者なのに外出したのではないか」と言われる状況でした。
どちらの判断をしても結果として批判される可能性がある、そんな状況だったのではないかと感じるようになりました。
実は、このような指摘が私に対してだけ行われていたという点にも、疑問が残りました。この時から三ヶ月ほど前、別の議員が検査キットで陰性だったことを理由に議会へ出席していましたが、後にガイドライン上では待機期間が1日早かったことが分かりました。
しかし、その件が問題として取り上げられることはなく、「今後は気をつけるように」という程度で済んでいたそうです。呼び出しを受けることもありませんでした。
そのことは、後に私の件が代表者会議で議論された際、その議員本人が私を庇う発言として明らかにしてくれました。
■ 本来の論点は別にあった
本来、この出来事で議論されなければいけない本質は、私個人の行動というよりも、議会としての対応や運用のあり方だったのではないかと私は考えています。
たとえば、濃厚接触者となった議員が出た場合、議会としてどのように対応するのか。その情報をどこまで、どのような形で共有するのか。また、議会事務局としての運用が適切であったのかどうか。
こうした点こそが、本来整理されるべき論点だったはずです。
しかし、実際の面談では、そのような議会の運用や事務局の対応について整理するというよりも、話の焦点が次第に別の方向へ移っていきました。
いつの間にか、議会事務局の対応や情報共有のあり方ではなく、私自身の行動や判断が問題であるかのような形で話が進んでいったのです。
私はそのやり取りを聞きながら、本来の論点が少しずつずれていっているような感覚を覚えていました。
■ 次々と持ち出される指摘が積み重なる
ある時には、私が検査キットで新型コロナウイルスではないことを確認しているにもかかわらず、咳が続いているという理由だけで、事務局長から再度検査をするよう強く求められたこともありました。同じ会派の議員に感染させるのではないかという理由でしたが、私に対してだけ、かなり執拗な対応だったと感じています。
また、欠席の連絡についても、次のような出来事もありました。
私が体調不良のため欠席すると事務局へ伝えたあと、検査の結果、インフルエンザであることが分かりました。そこでそのことを後から伝えたところ、すでに届け出には別の理由が書かれているとして、「欠席理由を偽ったのではないか」と議長から指摘を受けました。
しかし、実際には体調不良の段階で欠席を連絡し、その後に検査でインフルエンザと判明するという流れは、決して珍しいものではないと思います。
そんな指摘を受けたため、私は、本来は議員本人が後日あらためて欠席届に理由を正式に記入する運用になっていることを説明しました。その時点では、まだ正式な理由を書いたわけではないからです。
ところがこの件をきっかけに、欠席届については「事務局職員が代わりに書類を作成して提出している」という説明が後から示されました。そして、電話で欠席の連絡を受けた場合には、事務局職員が届け出を書いてもよいという取り扱いが、全体会議の中で事後的に報告されることになりました。
その結果、その運用は、あたかも以前からのルールであったかのように扱われる形で定着することになったのです。










