■ 第三者が調査を行なうという趣旨
専門家の意見を聞くという本来の役割は、大きく3つあります。
① 事実関係の整理・認定
・何が起きたのか
・誰が、いつ、どのような行為をしたのか
まずは「事実の確定」が最優先となります。
② 評価(ハラスメントに該当するか)
・法的・社会的な観点から評価する
ただし、これは「結論の一部」であり、目的そのものではないのです。
③ 再発防止・組織改善の提言
ここが一番重要です。
・なぜ問題が起きたのか(構造的原因)
・組織として何が足りなかったのか
・今後どうすれば防げるのか
本来はここまで踏み込んで初めて意味があります。しかしながら、多くの場合こう誤解されがちです。
「ハラスメントかどうかだけ決める機関」
「白か黒かを出すだけのもの」
これは実際は違います。なぜなら、第三者委員会は本来こういう立ち位置での役割を担っているからです。
・どちらかの味方ではない
・当事者同士の対立を深めるためのものではない
・「何が起きたのか」を客観的に整理する
そして、本質はここにあります。
→当事者双方の認識のズレや誤解を可視化する
この大きな役割を持っています。
ハラスメントは、その性質上、受け手の感じ方や文脈、力関係が大きく影響します。そのため、単純に「あるか、ないか」で判断してしまうと、本質を取りこぼしてしまうおそれがあるのです。
だからこそ本来は、行為の評価だけでなく、背景や経緯、関係性、さらには組織の構造まで含めて整理する必要があります。複数回にわたるヒアリングを重ねながら、丁寧に調査が進められるというのが、正常な第三者が関与する調査であると考えます。
また、第三者調査は裁判とは異なります。なぜなら、弁護士であっても専門分野はさまざまであり、すべての分野に精通しているわけではないからです。
特に、地方議会の中での議員間の力関係や、人間関係の機微については、十分に理解されにくい側面もあると感じています。正副議長という立場に対して忖度する可能性も否めません。
第三者弁護士による調査報告書が提出されたあと、私はその内容について、そのような疑念を感じていました。
■ 議長への申し入れと、その対応
調査の過程や、提出された資料の扱いについても、確認しておきたい点が多くありました。そこで、報告書の内容や、その扱われ方に疑問が残る中で、私はそれらを確認するための行動を取ることにしました。
まず、一番におかしいと感じたのは、被申立人(青山副議長)から提出された音声データについてです。資料が存在すると報告書に記載されているにもかかわらず、その提出物について申立人には知らされていませんでした。
通常であれば、事務局長が後から提出した反論書のように、申立人に知らせて、その内容を確認したり、申立人が反論する機会があるのが当然の対応だと思います。それがなぜ与えられなかったのか。こんな状況では、本来の目的から、かなりずれていると感じました。
そこで私は、令和5年3月14日、議長に対して👉『ハラスメント申入書に関する「報告書」について』の申し入れを行いました。
申し入れの内容は、調査の公平性や手続きに関する疑問についてです。
実際、報告書には「副議長から提出された本件面談の録音データ」という記載がありましたが、その録音データについては、申立人である私や代理人弁護士の側では、その存在を確認することができていませんでした。
そのため私は、この申し入れでは、録音データの提出を求めるとともに、調査の過程でその資料がどのように扱われたのかについて説明を求めました。
その後、数回の議長とのやり取りがありました。
■ 議長の回答と、解消されなかった疑問
議長からの回答は、毎回非常に簡潔なものでした。
提出された資料については、「被申立人から弁護士へ直接提出されたものであり、市議会としては保管していない」との説明が繰り返されていました。
これは単なる「保管の有無」の問題ではないのでしょうか。
専門家が、その資料について、私が提出した音声との間に齟齬があると指摘しているのであれば、本来はその内容を照合し、証拠としての正確性を確認する必要があると私は思います。
問題となっている音声は、議会内で録音されたものであり、しかも副議長という立場に関わる内容です。特定の私人の問題ではなく、議会の運営や公的立場に関わる事案です。
それにもかかわらず、私が提出した証拠については確認が行われる一方で、相手方が提出した資料については、その内容すら確認できない状態に置かれていました。
「被申立人の副議長が提出した録音データは編集されていないものなのか」
「その音声データは、いつ弁護士に提出されたのか」
「その音声データを確認することはできないのか」
しかし、議長からの回答は「編集していないと聞いている」「ヒアリングの際に提出されたと聞いている」といった内容にとどまりました。
さらに、「第三者に委任した手続きであるため、申立人と被申立人の間で資料を直接やり取りすることはない」という説明も示されました。その上、調査手続きについては「弁護士に任せている」という理由から、議会として回答することはできないという立場が示されています。
いずれにしても、このような回答によって疑問が解消されたとは言えませんでした。報告書に記載されている資料の存在について、申立人が確認できないままという状況には、大きな疑問が残りました。
このような取り扱いは、公平性の観点から見て、適切な対応と言えるのでしょうか。
人権を扱う上でも、公平性を欠く対応であったと言わざるを得ません。
同等の基準で証拠を取り扱っていない理由について、説明が尽くされていない印象を受けました。結局、被申立人である正副議長に対して説明を求めても、十分な回答を得ることはできませんでした。
十分に解消されないまま、疑念として残る結果となりました。
■ 申立人との連絡を拒み続けた調査の実態
報告書の内容について疑問が残ったため、私は弁護士事務所にも連絡を試みました。調査の過程や判断の理由について、直接説明を受けたいと考えたためです。
しかし、いくら電話で問い合わせても、担当した弁護士本人につないでもらうことは一度もありませんでした。対応は終始、職員を介したやり取りにとどまり、調査の内容や判断の理由について、申立人である私に対して直接説明がなされることはありませんでした。
本来、調査に同意した当事者に対しては、その過程や判断の理由について説明責任を果たすことが求められるはずです。しかしながら、連絡すら直接取ることが拒まれたまま調査結果のみが示されたこの対応は、説明責任が十分に果たされているとは言い難いものでした。
結果として、議会からも、調査を担当した弁護士からも、十分な説明を受けることはできませんでした。
■ 議会の中でも残された疑問
こうした状況の中で、この問題について疑問を感じていたのは私だけではありませんでした。
他の議員からも、調査報告書の取り扱いについて疑問の声が上がりました。連名で同年3月20日に松木議長と青山副議長に対して、申し入れが提出されたのです。
特に指摘されたのは、報告書が73ページに及ぶ文書であるにもかかわらず、議員に示されたのは概要の抜粋資料のみであったという点です。
「全文を示すべきではないか」「弁護士から説明を受けるべきではないか」といった意見も出されましたが、結果として、そのような対応が取られることはありませんでした。
こうして見ていくと、今回の調査については、どのような資料が提出され、どのように検討されたのか、その詳細について十分に確認できないまま議論が進められていったことになります。
申立人である私自身も、調査の中で扱われた資料の一部について、その存在や内容を確認できないままの状態が続きました。その中で、調査の結論だけが先に示されていったことについて、私は今でも疑問を感じています。
専門家によるこの調査は、いったい「誰のため」に行われたものだったのでしょうか。
本来であれば、組織のために風通しを良くし、問題の再発を防ぐための調査であるはずです。しかし実際には、そうした目的とは逆に、状況はより閉ざされたものになっていったように感じられました。










