海岸保全区域の住環境問題について
これまで私は、南芦屋浜の南護岸の管理体制がもたらす、住環境の問題提起に取り組んでまいりました。この活動は、議員になる前からのもので、自治会長として行政に向け、釣り客のマナーの悪さが近隣住民に与える迷惑行為の改善を訴えてきた経験が含まれています。また、議員になってからも、この問題を一般質問の場で取り上げ、解決に向けて発言してまいりました。
👉たかおか知子HP「第10回目一般質問4項目(南護岸でのマナーの悪いこれまでの迷惑行為について)」
令和4年6月16日の一般質問で、上記の項目を取り上げた背景には、2019年におきた台風21号による被害が関係しています。特に、涼風町全域が高潮浸水に見舞われ、護岸の損傷や高潮対策工事が行われたことから、工事が完了した後の管理運営についての重要性が浮き彫りとなりました。この経験を多くの方に知って頂きたいという思いと、過去の出来事を忘れず、同じような状況が再び発生しないようにするため、問題意識を提起し、注意喚起を行う必要があると感じたのでこの問題を取り上げた次第です。
以前の状況や進捗について、詳しくお話しする前に、まず、芦屋市内の海岸保全区域があることを知っていただくために述べます。
南芦屋浜の南側に面する護岸に関してついていえば、緑道のある場所は市が公園管理する指定エリアであり、駐車場までは市が管理しています。一方、海側の散歩道となっている対策工事が行われた海岸沿いは、兵庫県知事によって海岸保全区域として指定され、管理者権限は、兵庫県阪神南県民局尼崎港湾管理事務所に委ねられています。
南護岸に入る散歩道の途中までは市が公園として管理し、それ以降の場所については県が運営の決定権を持っていると言えます。
市の職員に相談に行ったとしても、市の管轄外の問題については「県に聞かないとわからない。」という立場を取られました。このような状況から、市と県の緊密な連携が重要となっています。市としては、できる限り市民の利益を守るために行動したい思いはあるものの、海岸管理の決定権や規制に関することは、主に尼崎港湾管理者が担当しているため、県職員との協力が不可欠です。
そんな中、ここからはこの問題に関わってきた私の印象ですが、高潮浸水が起こる前は、はっきり言って尼崎港湾は、まったく住民の意見を相手にもしていないご様子でした。海岸の使用形態は、「海岸の敷地は公共空間であるため、その使用は海水浴や釣りなど、誰もが自由に使える「自由使用」が原則」こればかり尊重されてきたのです。
護岸に密接する場所が戸建て分譲地で、住民が増える中、釣り客のマナーの悪さはますます横暴していき、違反を注意すると逆ギレをされ、住民は肩身が狭い思いをしていました。実際、私の子どもがヨチヨチ歩きの時に護岸を散歩し、家に帰ると釣り針がついていたとう話をしても、「ふ〜ん。」という反応で、問題意識を持ってくれているようには思えませんでした。
近隣住民は二の次、住環境を尊重する考えは行政にはない、そんな印象を持っていました。何より「自由使用」の理由を全面に出して、釣りを楽しむために訪れる人を尊重しているかのような返答ばかりでした。
ゴミの清掃活動を3日間停止した結果
そんな時、私は当時、自治会長であったことから、行政に市民の問題意識を理解してもらう方法を模索しました。最初に考えたのは、「ひどい状態を知ってもらう必要がある」という点でした。そのため、ある作戦を思いついたのです。
以下のこの写真は、私が撮ったものです。
当時、南護岸で釣りに訪れた人々が放置したゴミ問題に対処するために、フィッシングマックスと地元の涼風町自治会などのボランティア団体が積極的に清掃活動を行っていました。このボランティアの協力により、護岸の清潔さが維持されていたのです。
私は釣り客が多く訪れるシーズンの到来を考慮し、特定の実験を実施することにしました。具体的には、フィッシングマックスのメンバーが、通常行っていた定期的なゴミ回収活動を数日間停止するようお願いしました。この実験を通じて、誰もがゴミを回収しない状況で、護岸がどのように変化するかを実際に観察しようと考えたのです。
実験の結果は、写真をご覧の通り、ゴミは一日で大量にたまり、日を追うごとに山積みになっていく、極めて深刻な状況が生じました。フィッシングマックスのご協力により、この実践のデータを通じて、護岸の清潔さを維持するために必要な取り組みと、地域のボランティア活動が果たす役割についての新たな分析結果を得られました。そして、このような酷い状況が映し出された写真を元に、より良い環境づくりへの一石にしていったのです。
更に、この状況を広く知らせる手段として、MBSの「憤懣本舗」という番組に応募しました。採用が決まり、撮影が予定されましたが、撮影の直前に南芦屋浜地域が台風21号による高潮浸水の被害を受け、撮影は中止となりました。その代わり、高潮浸水被害に関する県のハザードマップの誤りに関する問題提起をしていたことについて、逆に「憤懣本舗」の出演依頼を受けることになった経緯があります。この展開は、不思議なめぐり合わせでした。
高潮の被害を受け、県行政が行っていた護岸の測定ミスや高潮対策の不備などが明るみに出たことで、南護岸は注目を浴びるようになりました。このことがきっかけとなり、県は住環境の安全と安心を最優先に考えるように変わっていったと言えます。
南芦屋浜ベランダの新たな運営管理の可能性
こんなことが功を奏した結果、南護岸対策工事が完了後も、以前のようには、まだ釣りの全面開放には至っていません。現在(2024年1月末)は、西側は釣り禁止区域とし、東側のみが釣り可能なエリアとして試験的な開放で護岸の管理運営を行っています。
そして、尼崎港湾と市の道路・公園課は、隣接する地元の自治会である涼風町自治会の「南護岸環境対策委員会」を涼風町の代表窓口として考え、県は協議を重ねています。現在、全面開放などの方針をどうするかについて意見集約が求められています。通常、こうした町の意見を収集する場合、自治会の会長が代表として行政と協議に参加することが一般的です。しかし、涼風町自治会の規約は、その目的に応じた委員会を設立し、意見を持つ町の会員が委員会に参加し、行政に対して意見を述べる機会を提供しており、その窓口対応は各委員会ごとに設けています。
涼風町自治会の規約を見ると、「第18条(意見集約)行政との折衝が必要な場合、代表となる委員会を立ち上げて理事会の承認により権限を委任するものとする」とうことなので、自治会員であれば誰でも参加可能な委員会となっています。
ただし、規約には「町内の意見集約は自治会員だけに留まらず、町内全域に情報共有を行い、その結果を代表として認めるものとする」と明記されています。これに基づき、町内全域で情報を共有し、意見集約を行った場合、その結果を自治会の代表意見として扱うことができる。この点を行政と共有し、透明かつ公正な意見集約プロセスを確立することが必要ということですね。
それにしても、私が常に感じるのは、行政のアプローチが代表者を指名し、その意見に焦点を当てる傾向があることです。行政は協議を簡略化しようとしているように見受けられます。一方で、異なる方法論を持ち寄ることで多様な意見が出る可能性があり、それが意思決定を難しくする要因となることを懸念しているのは理解します。しかし、このアプローチの結果、意見を伝える手段の知らない人々の声が届かなくなり、声の大きい意見だけが優越する可能性があることについても疑念が生じています。
私が自治会で協議してきた頃と現在とを比較すると、大きな違いが一つあります。それは、尼崎港湾の現在の対応が、以前とは逆で、住民の意見を優先的に尊重しようとしている点で、大きな変化があると感じます。行政が住民の声に耳を傾ける姿勢を示している今こそ、まちづくりに関わる南護岸の今後の運営方法について、限られた意見だけでなく、幅広い視点からの意見を収集し、検討して決定してほしいと考えます。問題提起や感想を言うのが市民の役割であり、それを聴き、最適な方法論を策定するのが行政の責任です。
方法論ありきの話し合いは目的を見失う
議員としての役割を果たす中で、たとえば、南護岸の釣り全面開放に関して「賛成」または「反対」といった、結論ありきの問いに直面することがあります。もちろん、議案が提出された際には、議員としてはっきりと賛成または反対を表明します。ただ、話し合いの前に、「孝岡さんは、どちらなのですか?」という質問に対して、私は、方法論に固執してはおらず、行政が市民と共により良い解決策を見つけ出すための対話をしてくれることを求めてきました。あらゆる意見やアイディアが存在する中で、柔軟な発想と共感を持ちながら、市民と協力して、より良い結果を導き出すプロセスを大切にしてほしいと主張し続けてきたのです。
市民の皆様の中には、非常に賢明で建設的な意見を持つ素晴らしい人々が多く住んでおり、そのアイディアが重なりあえば、より一層良いまちづくりの実現が可能になっていくと期待を寄せていたからです。しかし、異なる意見を自分たちの立場で押し黙らせようとし、単に排除しようとする人々が存在することも、残念ながら現実としてあるようです。
意見を交わす中では、お互いの立場を理解し、尊重し合うことが非常に重要です。県と市が今後どのような結論を出すかはまだ不透明ですが、単なる禁止や規制だけでなく、明るく楽しいまちづくりを目指して、共存の方法を模索する機会として捉えるならば、地域の美化と環境保全、マナー向上の意識を高めながら、地域の交流に関する建設的な対話を進めることで、「ルールを守りつつ、住環境を尊重する条件下で釣りが許可されるている地区」という町のイメージを住民が築き上げることも可能です。意見がまとまり、良好な地域づくりに向かって協力し合い、将来的にまちづくりの形が良い方に向かうことを願っています。
インターネット中継の録画