尼崎港管理事務所が地元住民と接してきた状況
これまで県と市が地元住民の意見をどうやって聞いてきたのか、そしてその交渉がどのように進められてきたのか、要望書が提出される前段階の経緯についてお伝えします。ここで指している地元住民とは、涼風町自治会の文科会に属する委員会のことであり、その中の委員と協議を行ってきたということでした。そこで、県と市の両方に対して、この委員会と過去に行ってきた協議録を公文書開示請求し、会議の内容を確認しました。以前の話し合いの経緯は次の通りであったことがわかりました。
-
2021年12月25日に、南護岸環境対策委員会が設立され、行政との折衝権限を涼風町自治会会長から委任されていた。
- 同委員会は、これまで委員(近隣住民5名〜10名)が、行政との交渉や提言を行っていたが、護岸の釣り解放をめぐり旧委員と新委員の意見の統一が行われず、委員内から活動に対する問題点があげられた。この指摘を受け、自治会本部の理事会は2024年3月18日に状況確認を目的とした議案を可決した。 同委員会は、行政折衝に関する必要事項の確認について、回答を求められていた。しかし、2024年4月16日までに同委員会からの回答が得られなかったため、理事会は、同委員会を規約違反(第18条に基づき、行政との協議・交渉において事前の適切な意見集約および事後の協議・交渉内容の情報共有を行っていない)であることを議決し、行政との折衝権限を取り消しすることになった。それ以降、涼風町自治会として県及び市と、本件についての話し合いは行わない旨が自治会員にも報告されている。
-
南護岸や駐車場開放に向けての措置を提案していた。「釣りを全面禁止にしたい」という意向を行政から委員に伝えたことはなく、試験期間を終えた後も、現状維持か全面開放に向けてどのように進めるか、についての意見を求めていた。
- 4月16日に、涼風町自治会から、南護岸環境対策委員会と県及び市との間の直接的な折衝を取り消す決定がなされた旨の書面が届いたことを受け、以降、南護岸等について近隣自治会を窓口とする地元住民との意見交渉は行っていない。
- 3月31日で部署を離れ、4月から別の部署に異動となっている。
-
前任者と同じ理由で、南護岸の近隣自治会を窓口とする地元住民との意見交渉は行っていない。
- 2024年6月に入り、10ブロック会会長から南芦屋浜南護岸等について、10ブロック会との協議の要請があり日程調整を行った。
- 6月21日に協議を行うことにしたのは、南護岸環境対策委員会と面識のある10ブロック会会長から、10ブロック会として引き続き交渉の場を持つことを求められたためである。
【釣り全面禁止を決定するまでの県の動き】
6月21日:ブロック会長からの申入れにより、協議の場を設けた。
7月6日 :17時ごろ、ブロック会長からメールで要望書を受け取った。
7月8日 :ブロック会長へ、次の会合の日程を電話で伝えた。
7月19日:ブロック会長が出席し、10ブロック会のメンバーと認識する中で、要望書について協議を行った。その結果、地元の総意と理解し、8月1日からの釣り禁止を決定した。
要望書は、本当に『地元の総意』と言えるものだったのか?
4月に後任の課長に代わった後、6月に2回の協議を経ただけで、短期間の間に急展開を見せた「釣りを全面禁止にする」という決定ですが、それほどまでに、この要望書は影響力のある重大な民意であり、地元総意の望みだったのでしょうか。
県の課長が私に説明した際も、「かなり酷い迷惑行為に困っている住民を救うために急いだ措置」ということでした。しかし、一見、『釣り禁止』にすることで住民が感じている迷惑行為がすべて解決するかのような伝えられ方がされていますが、実際にはそう単純なことではありません。No.4で説明したように、酷い状況が続いていると言いながらも、すでに改善が進んでいる部分もありました。また、まち全体の意見を集約したものとして、10ブロック会の要望書だけを基に決定を急いだのは、非常に乱暴なやり方だという印象を拭えませんでした。
そして、私の勘は的中しました。行政は、一度決定した「8月1日に釣り全面禁止にする」という通知を、また今度も突然に、一旦延期することにしたのです。やはり最初の決定は、正しく民意を反映した中で判断されたものではなかったのか?行政が「地元の総意」だと言い張れるほどの内容だったのか?そして、一度決定された『全面釣り禁止エリア』の決定を、このタイミングでどうして取りやめることにしたのか?いよいよ、その真相に迫っていきます。
●7月25日
「芦屋市自治会連合会 理事 第10ブロック会 会長 氏名」の名義で発出された令和6年7月6日付け要望書について、これが10ブロック会の総意として正当性を欠いた形で提出された可能性があることを突き止めた涼風町自治会会長は、県と市の各所管課に対し、まずは自分の自治会がこの要望書の提出に、10ブロック会のメンバーとして関与していない旨を電話で伝えたようです。
●7月27日
7月25日に電話で伝えられた内容に加えて記録として、再度、県と市の各所管課にメール文の送付が涼風町自治会会長から届きました。
行政は要望書の意見が、南護岸に一番近く、迷惑行為に最も影響を受ける場所に住んでいる自治会の合意が得られているものと聞いていました。しかし実際には、意見聴取が十分に行われておらず、この地元の会長から要望書を提出する意思がなかったことが伝えられ、これが行政にとって計算外の事態となったようです。
『釣り禁止』決定に急ブレーキ、ストップの知らせが入る
●7月29日
市議会議員宛てに「8月1日からの釣り禁止を取りやめる」という内容の通知が届きました。
所管:道路・公園課
件名:南芦屋浜南護岸等の利用制限の開始時期について
内容:上記制限を一旦延期とすることについて
●8月9日
兵庫県議会で開催された県土木部との政務調査会において、『一旦延期』となったことに関して、県職員は「地元の意向について認識の相違があった」と説明していました。
●9月3日
市議会の建設公営企業常任委員会において、『南芦屋浜南護岸等の利用について』の所管事務調査が行われました。本件は議員側から当局に対し、新規の所管事務調査として「南芦屋浜南護岸等について釣りができないエリアとすることの決定を一旦延期することとなった経緯等の報告」が求められ行われました。そこで公表された内容は次の通りです。
【都市政策部都市基盤室道路・公園課の課長の説明】
- 南芦屋浜南護岸等において協議していた地元の自治会とは、涼風町自治会の南護岸環境対策委員会である。
- 釣り禁止を求める地元総意としての要望とは、10ブロック会から出された要望書のことである。
- 延期にした理由は、涼風町自治会がこの要望書に関して棄権していたからである。
- 要望書の提出者(ブロック会長)に、状況の確認を求めたが返答がなかった。
これまで、釣りのできるエリアとできないエリアなどの試験的な解放の決定は、南護岸環境対策委員会を自治会窓口の委任先とし、協議して決めてきたようです。県と市は、この委員会を通じて町内の住民には、行政が提示している課題や説明など協議事項が共有されているものと認識していました。しかし、新しいメンバーが委員会に加入したことで、これまでの旧体制で決定されてきた事項に対して規約違反があったのではないかという疑いが生じ、疑義が解消されなかったことを受け、行政との折衝が取り消しとなる決定がなされています。自治会がこのような決定を下すには、よほどの理由があったと考えられます。つまり、委員会がこれまでのように自治会の名義を借りて行政に意見を述べることは「もうやってはいけない」という状況に至っていたということです。もし協議内容がクローズのままで、限られた意見だけが述べられていたとすれば、それは行政判断において民主主義の原則に反する行為と言えるでしょう。
いかがでしょうか。この数日間で、行政が一度決定した内容を撤回するというのは、ただ事ではありません。この後、まさに私の予想を超える展開が待ち受けていました。次々と明らかになる事実をもとに、次のページでさらに踏み込んでお伝えします。
No.6 兵庫県が決定した南芦屋浜南護岸等の『釣り禁止』の裏に隠された驚きの真相!につづく・・・『本物が知らぬ間に進んでいた協議と行政の決定』