申入書は個々の議員の言動を問題視
これまで芦屋市では、議員の言動に対して、市長が「申入書」という形式で抗議の意思を伝える場面がたびたび見られました。 とくに高島市長になってからは、議会宛てに“正式な書面”が送られてくることが多く、その内容はしっかりと公文書として記録に残されていました。議会側も、それによって実際に改善や見直しを行うこともあったのです。
つまり、市長が議員に対して意思を示すときは、いつも大きく打ち出されてきました。というやり方が、芦屋市議会では最近の傾向となっていたわけです。市長から議員への“けん制”は、いつも堂々と、大々的に公文書で申し出されてきたというのが実情です。
しかし、議会全体としての受け止めは、「自分のことじゃないから」 そんな空気が議会の中に流れています。誰か一人が標的にされても、多くの議員は見て見ぬふりできる。定数21人のうち、実際に関わるのはごく一部で、残りの議員たちは「関係ない」として静かにやり過ごせる立場にいます。申入書が出されたとしても、「あれはあの議員に対するものだから」と厳しく取り上げても、議会全体として自分が責められていることにはならないからです。だからこそ、申入れが出されたとしても、多くの議員にとっては“自分には関係ないこと”であり、痛手にはなりません。内容も、議会全体ではなく個人の言動を問題視する、いわば“告げ口”のようなものがほとんどだと、私は感じています。
ところで、逆の場合はどうなのでしょうか。つまり、執行機関側に問題があったとき、議会は正式に高島市長に申し入れを行ってきたのか? 答えは明確です。これまで一度もありません。
実際、私自身にもこうした経験があります。一般質問の場で、事前に通告していた質問に対して、答弁が一切返ってこなかったことがありました。沈黙が続き、明らかに「答弁拒否」とも受け取れる状況だったにもかかわらず、議長からの対応はこうでした。 「その場であなた自身が議事進行を使って、答弁漏れを指摘しなかったのなら、議会として申入れはできません。」 結局のところ、議員が不利益を受けても、それを議会全体の問題として正式に対応する姿勢は見られませんでした。結果として、どれだけ議員の質問が無視されたとしても、それが「記録にも残らず、問題として扱われない形」で処理されてしまいました。議会全体として問題視し、注意されることもなかったのです。
たとえ議会からの申入書の内容が自分に直接関係していなかったとしても、本来は“議会全体の問題”として受け止める内容であることも考えられますが、そのようなことが取り上げられることはまずありません。ところが逆に、執行機関から議会にくる抗議の申入書は、いつも特定の議員を名指しした内容が中心です。
市長からは強く、議会からは弱い
今回、まさに私自身が「議会の対応を試している」とも言えるような事案が起こっています。 市側の対応には、明らかな不備がありました。しかもその行為は、二元代表制の原則を踏みにじるような、到底看過できない内容でした。にもかかわらず、議会全体として市長に対して正式な申入れを行うような動きは、一切見られていません。
つまり、どれだけ議員の立場や権限が軽視されても、議会はそれを「公の問題」としては扱わない。そんな空気が、静かにまかり通りそうです。 結果として取られた対応は、「所管課から事情を聞き、議長が内々で説明を受け注意しただけ」それ以上の措置はなく、当然、公文書としても何も残っていません。
この内容は、本日5日(木)に開かれた議会運営委員会でも、非公開の全体協議会の中で出た内容を、議長から簡単な経過説明があったのみです。議運は公開なので、市民の方はこの段階から状況を知ることになります。市長がこの件について市民に対して何らかの説明や責任を果たすのかどうかも明らかにされておらず、議会側から追及するような姿勢は、誰からも見られませんでした。
市長と議会(議員)は、本来、対等な立場にあります。地方自治の根幹をなす「二元代表制」は、その前提に立っています。にもかかわらず、実際には、市長側からの“抗議文”はきっちり文書として残される一方で、議会側から市長に対して「物申す」ことは極端に少なく、形式として残ることすらない。この力関係のバランスに、だんだん違和感を覚えています。
もちろん、何でもかんでも「書面で対抗すべきだ」と言いたいわけではありません。しかし、公の場で行われた行政側の対応に問題があったと認識されているにもかかわらず、それに対して議会として声を上げず、何も残さない。それでは、市民から見たときに「チェック機能が働いている」とは到底言えません。 議会が沈黙を貫くことで、何が“なかったこと”にされていくのか。抗議の意思を、市長側だけが文書として残し続ける一方で、議会からの反応は一切なし。それでは、後から振り返ったとき、議会が言及された市側の言い分だけが「公式な事実」であったかのように記録されてしまいます。この構図自体、すでにおかしいと感じています。
こうして、議会としての意思表示はますます曖昧になり、気づけば、市長だけが行政側の不満をきっちり抗議として表していく。一方で議会は、有耶無耶にして何も言わず、残さない。もちろん、健全な二元代表制とは、互いにマウントを取り合う関係ではありません。でも、だからといって、市長の顔色を伺うかのように、厳しくものを言えない議会の姿勢も、やはりおかしいと思うのです。
高島市長による、議会宛の申し入れ文書
060410総括質問の通告期限に係る市長からの申入れについて
060410発言通告書及び情報発信に係る市長からの申入れについて
060705児童虐待防止対策に対する理解促進及び職員の個人情報の取り扱いに係る市長からの申入れについて
061125令和6年執行兵庫県知事選挙に係るたかおか知子議員のSNSによる情報発信等に係る市長からの申入れについて
070122政党機関紙の庁舎内勧誘行為に関する市長からの申入れについて