常任委員会視察2日目
令和7年10月22日、建設公営企業常任委員会のメンバーで行政視察に茨城県の常総市役所に行ってきました。
常総市は、平成27年9月の関東・東北豪雨において鬼怒川堤防の決壊により、市域の約3分の1が浸水する甚大な水害を経験した自治体である。被災後は、堤防整備などのハード対策だけでなく、住民一人ひとりの避難行動を具体化する「マイ・タイムライン」の推進や、防災教育、広域避難の仕組みづくりなど、ソフト面を重視した防災施策を展開している。本市においても、近年の気候変動による豪雨災害リスクの高まりを踏まえ、住民主体の防災意識向上と実効性ある避難体制の構築が課題となっていることから、「大規模水害の経験を教訓とした防災対策の再構築や、住民参加型の防災意識向上の取組を学び、本市の今後の防災政策の参考とすること」を目的として、視察先に選定しました。
常総市の防災対策に関する取組概要(視察まとめ)
1.市の概要
市制施行:2006年1月1日(旧水海道市・石下町の合併による)
人口:60,265人(2025年4月1日現在)
世帯数:26,216世帯(うち外国人4,307世帯)
面積:約123.64㎢
特徴:茨城県南西部に位置し、東京都心から約55km圏内にある。市域中央を一級河川である鬼怒川が流れ、東部には広大な低地の水田地帯が広がるなど、水と農業に関わりの深い地域特性を持つ。一方で、河川に近接する地形から水害リスクを抱えており、平成27年の関東・東北豪雨による大規模浸水被害を契機に、防災・減災対策の強化に取り組んでいる。
2.平成27年9月関東・東北豪雨の概要
平成27年9月、台風第18号から変わった低気圧の影響により、関東・東北地方では記録的な降雨が観測された。栃木県では線状降水帯が発生し、大雨特別警報が発令されるなど極めて危険な状況となった。常総市では9月10日午前6時30分頃に鬼怒川の溢水が確認され、その後12時50分頃には堤防左岸が約200mにわたり決壊し、市域の約3分の1(約40㎢)が浸水する甚大な被害に至った。
3.救助活動の状況
自衛隊、海上保安庁、警察、消防による広域的な救助活動が展開され、ヘリコプターおよび地上部隊による対応が行われた。救助された人数は合計4,258人であり、大規模災害時における関係機関の連携体制の重要性が示された。
4.人的被害および住家被害
人的被害は死亡15人、重症3人、中等症21人、軽傷20人で、行方不明者は確認されていない。住家被害は全壊53件、大規模半壊1,566件、半壊3,265件、床上浸水122件、床下浸水1,117件となり、認定件数は合計6,123件に及んだ。
5.避難者の状況
避難所は市内26か所、市外13か所に設置され、ピーク時には市内4,501人、市外1,722人が避難した。市外避難が一定数存在したことから、広域避難の必要性と事前調整の重要性が明らかとなった。
6.災害廃棄物への対応
災害廃棄物の分別および処理のため、一次仮置き場が13か所設置された。発生した廃棄物は約52,517トン、し尿67㎘にのぼり、分別作業には多大な時間と費用を要したとの説明を受けた。
7.農業被害
農地の浸水や砂の堆積により、農業被害額は約62.3億円、被害面積は1,406haに達した。地域経済への影響の大きさがうかがえる。
8.防災意識向上に向けた取組
国・茨城県および流域自治体と連携した鬼怒川緊急対策プロジェクトにより、堤防の復旧やかさ上げ、河道掘削などの治水対策が進められている。ハード整備と並行し、住民の防災意識向上に向けたソフト施策も展開されている。
9.災害から見えた課題
災害検証では、事前対応計画の重要性、情報伝達手段の多様化、過去の経験による正常性バイアスなどが課題として整理された。特に避難行動の遅れに関しては、住民の理解促進が不可欠であるとの説明があった。
10. 広域避難体制の整備
鬼怒川・小貝川下流域の13市町による減災対策協議会が設立され、「大規模水害時の広域避難に関する協定」が締結されている。現在は定期的な広域避難訓練も実施されている。
11. 住民主体のタイムライン
住民一人ひとりが避難判断や行動を整理する「マイ・タイムライン」の普及が進められている。モデル地区での検討会のほか、「逃げキッド」と呼ばれる教材を活用し、水害発生までの行動を具体的に学ぶ取組が実施されている。
12. 学校における防災教育
小中学校では、防災スポーツや防災キャンプなどを通じ、楽しみながら防災を学ぶ教育が実施されている。災害時の自助・共助の意識形成を目的とした実践的な内容が特徴である。
女性の参画と避難所運営の取組
常総市では、水害発生時の避難所運営や被災者支援において、地域の女性団体や女性ボランティアが重要な役割を担ったことが報告されている。特に、避難所での生活環境の整備、物資の仕分け、子どもや高齢者への配慮など、きめ細かな対応は、避難生活の質を左右する重要な要素であった。
また、災害対応の検証を通じて、女性の視点を反映させた避難所運営や防災計画の必要性が認識され、その後の防災施策の見直しにも活かされている。防災は単なる危機対応ではなく、平時から多様な立場の声を反映させておくことが重要であるとの説明を受けた。
私の感想
今回の視察を通じて、防災対策はハード整備だけではなく、地域で支える「人」の力によって成り立っていることを改めて実感しました。常総市では、平成27年の水害時において避難所運営や被災者支援の現場で地域住民が大きな役割を果たしており、特に女性の担い手による細やかな対応が避難生活の質を支えていたことが印象的でした。物資管理や生活環境への配慮、子どもや高齢者への支援など、日常生活に近い視点が災害時には重要であり、防災における多様な主体の参画の必要性を強く感じました。
また、大規模災害の直後には住民の防災意識が高まるものの、時間の経過とともに危機感が薄れていくという課題についても理解が深まりました。災害は突発的に発生する一方、防災意識の維持は日常の積み重ねによってしか成り立たないこと。常総市が取り組んでいるマイ・タイムラインなどの施策は、防災を一時的な取組ではなく、日常生活の中に組み込むための工夫であると感じました。
私自身、南芦屋浜において突然の浸水被害を経験したことがあり、災害が予想外の形で日常を変えてしまう現実を身をもって感じています。その経験と重ね合わせると、防災は「いざという時」だけではなく、平時から地域全体で、咄嗟のことに対応できる意識を保ち続けることが何より重要であると改めて認識しました。
今回の視察で得た学びを踏まえ、本市においても、ハード対策に加え、住民主体の防災意識の醸成や、多様な視点を取り入れた避難体制づくりについて検討を深めていく必要があると感じました。
行政視察恒例の、議場見学もさせていただきました。どこも違った様々な雰囲気があります。














