「学校法人」から「社会福祉法人」へ
公共施設に関連する市の予算で議決した後、議員がその後の新設を内覧させてもらうことがあります。7月25日、芦屋市立芦屋高等学校の跡地に新しく特別養護老人ホームとケアハウスが開設されたので、市議会として見学をさせていただきました。内覧は自由参加となっており、参加議員は14名でした。
以前、芦屋市の山手に公立高校の芦屋市立芦屋高等学校。略称「市芦」が存在していましたが、2004年6月の市議会において廃校案が可決され、2011年10月中に売却の入札を行うことを芦屋市は決定したということです。当初、芦屋市は学校法人を対象として勧めていましたが、廃校から10年近く荒れ地のままになっていました。
その後、2016年2月の売却先が大阪市の不動産業者に決まり、そして、高齢者向け住宅と有料老人ホームに活用されることになり、現在は社会福祉法人福祥福祉会を事業主体として、跡地に特別養護老人ホームとケアハウスが4月に開設されました。
「学校法人」にするということで廃校が決まり、引き継がれたのは「社会福祉法人」だったということですが、本当にその活用しか選択肢はなかったのかと正直思ってしまうところはありました。当然のことながら、荒れ地のまま放置しているよりは、何かの施設が建った方が良いとは思いますが、売れればそれで芦屋市として万々歳となるのでしょうか。
施設の中は高級感あふれ、受付のホールには立派なシャンデリアの螺旋階段があり、廊下の壁には名画が並び、食事も充実していて(和・洋・中)と選べることもでき、4階には夜景を堪能しながらお食事ができるステーキハウス(鉄板焼)もあり、まるでホテルに滞在しているような内装でした。もちろん、お値段もそれなりにすると思ってください。
後から条件を入れ込む行政の押し付け
担当者の説明の中で、まず、ホーム入居者に芦屋市民を優先にすることを念頭におかれている話が出たのですが、それを聞いて私はこう感じていました。住民税を払っている芦屋市民を対象にしていることになりますが、自宅を売りホームに入ってもらうより、固定資産が入るように在宅ケアの支援に力を入れる方がよっぽ税収として良い考えではと思ったからです。
芦屋市にお住まいの方の入居の比率を上げられていましたが、全国からの受け入れを広げる条件にして何がいけないかなと感じでした。そして、事業者が口にする「地域密着」「地域連携」へのアピールです。行政がこの言葉にこだわり民に条件を押し付けるのは公共施設を手放した後ろめたさでもあるのでしょうか。
もちろん、災害など緊急時の際は協力し合う協定は必要ということはありますが、敢えて無理やり密着を押し付けなくても、地域が困難な時は自然と助け合うのは当たり前のことです。民には民の官には官の考えがあって、むりやりそこに条件を押し付けた所で、お互いに良い活用の場になっていかないと私は常々感じています。
以前こんなことがありました。図書館がほしいからという市民の要望に答えるため、民のスポーツジムの横の休憩所に本を並べて「図書館つくりました」としても、賑やかな場所で誰がそこで本を読みここは図書館だというイメージを持つでしょうか。後付で条件合わせをして、市民に納得させるためだけの要求を求める市のやり方は都合が良すぎる話だと思っています。
立地条件に合うものの考え方
それにしてもこの場所は山の景色、海の景色が一望出来てとても良い景観の立地でした。人が集えるレジャー施設や、公園、観光スポットとしての選択肢はなかったのでしょうか。もちろん、現代社会において、特別養護老人ホームとケアハウスも需要にあった施設なのかと思いますが、もう少し、芦屋市の立地というものの価値を見据えて考える必要があるのではないでしょうか。
現在、空き地2期目の工事に取りかかっていますが、すぐ横には芦屋霊園があり墓地が見えます。気分的にこういう場所にこそ、ギャップ的に子育て世代が集まるような施設があれば、町の雰囲気も違ったようにうつるのではないでしょうか。それこそ「地域密着」の交流にもつながるように思います。
社会福祉施設なのでは、多世代の交流を図れるためにという言葉を耳にしますが、実際は人が集まる機能的なものが偏っているのに多くを求めるのは難しいことです。もしこの場所でファミリー層やカップルが好む施設があるとしたら、その動線として交流を図れるチャンスは訪れます。
まず、人が集まってくる環境が同じ場所にあるからです。地域の連携を求めるならば、まず、子どもに合わせたものを中心に考える必要があります。子どもを大人の都合に合わせるのではなく、人が集まる環境が整っていない場所で地域との交流を図るというのも無理がある話だと感じています。
もっと本気で地域連携を考えているなら複合施設として捉えるべきではないでしょうか。子育て世代との交流を深めるというのなら、地域密着としての考えだけでケアハウスにまず訪れると言うのは考えにくいです。接点を無理矢理つくるようなものだからです。子どもの遊び場とはイメージが程遠い場所で子育て世代との交流を深めるには、まず、子育て世代層が集まるものをつくらなければいけません。
森の中のアスレチックならわざわざ足を運ぶけれど、子どもを連れて遊びに行くのにケアハウスでの交流を連想しますか?いくら楽しそうなイベントをやっていると言っても、恐らくファミリー層が優先的に足を運ぶことは現実的に考えにくいということです。
実現から程遠い理想論で、可能性だけのメリットをつくりだしているような見解で市民は納得させられているのでしょうか。中途半端なビジョンのまま決断してきた結果が後世に現れてくるのだと思います。正直な所、今回の施設のイメージは静かな高級感漂うコンセプトがあるように感じたので、そこに子どもが集う場所の接点をつくるのはイメージし難いと感じました。
加えて今回の施設について、説明の中には施設利用者の憩いの場として子育て世代との交流をという話は出てきておりませんでした。初めからそういった多世代交流を目的としった施設として、地域密着で利用してもらう方を対象に焦点として当てていないからだと感じました。そこは、これから地域としてどのように関わっていくかの力によるのではないでしょうか。
今後、2期工事の空き地の場所はどういった内容にするかの計画がまだ定まっていないようでしたが、子どもとの交流を先に考えたプランを盛り込む施設になれば、それも難しくはないリクエストとなるように感じました。